卸売在庫とは?
経済指標の中で、地味だけどプロが必ずチェックしているのが「卸売在庫」です。
「在庫が増えた」と聞いて、あなたはどちらをイメージしますか?
- 「これからバカ売れするから、商品を山積みにした!」(ポジティブ)
- 「全然売れないから、倉庫がパンパンになってしまった…」(ネガティブ)
この判断を間違えると、相場の方向性を見誤ります。 この記事では、卸売在庫の正しい読み方と、それがGDPやドル円にどう影響するかを解説します。
卸売在庫とは
卸売在庫(Wholesale Inventories)は、米国商務省センサス局が発表する、卸売業者(メーカーと小売店の間に入る業者)が抱えている在庫の金額ベースの統計です。
発表のタイミングは2回あります。
- 速報値: 翌月下旬(こちらがよく動く)
- 確報値: 翌々月上旬
「良い在庫増」と「悪い在庫増」
この指標の最大のポイントは、「在庫が増えた理由」を見極めることです。 数字上は同じ「在庫増」でも、意味は真逆になります。
良い在庫増(積極的な積み増し)
- 理由:「これから売れる」という強気な予測
- 背景:好景気、需要拡大
- 判断:経済活動が活発化しているサイン
悪い在庫増(意図せぬ滞留)
- 理由:「売れ残ってしまった」という誤算
- 背景:不景気、需要減退
- 判断:生産調整(減産)の前触れサイン
嘘をつかない「在庫率(I/S比)」を見よう
在庫が増えているのが「良い」のか「悪い」のか、どうやって判断すればいいのでしょうか? その答えは、同時に発表される「在庫売上高比率(Inventory-to-Sales Ratio)」、通称「在庫率」にあります。
【在庫率の計算式】 在庫率 = 在庫残高 ÷ 売上高
- 在庫率が低下・横ばい: 在庫は増えているが、それ以上に売上も伸びている → 「良い在庫増(好景気)」
- 在庫率が急上昇: 売上が落ちているのに、在庫だけが積み上がっている → 「悪い在庫増(リセッション懸念)」
GDPとトレードへの影響
1. GDP改定値の修正要因になる
米国のGDP算出において、「民間在庫変動」は大きなウェイトを占めます。 卸売在庫の数値が予想より大きい(または小さい)と、後日発表されるGDPの数値が上方修正(または下方修正)される原因になります。
そのため、GDP発表前の「先行指標」として、機関投資家はこの数値を注視しています。
2. 「速報値」での初動狙い
以前は確報値のみでしたが、現在は「速報値」が発表されるようになりました。 市場は情報の鮮度を好むため、月末の速報値発表時に為替レートが反応しやすくなっています。
- 予想より在庫増(かつ売上も堅調) → ドル買い要因
- 予想より在庫減(需要はあるのにモノがない) → インフレ懸念 → ドル買い要因
- 予想より在庫増(かつ売上が低迷) → 景気後退懸念 → ドル売り要因

特に『悪い在庫増』が確認されると、次の四半期で企業が生産を減らす(=GDPが下がる)ことが確定路線になるため、中長期的なドル売りトレンドの初動になることがありますよ!
Fintokeiなどのプロップファームでの扱い
卸売在庫自体は、通常「中重要度(Orange Folder)」扱いであることが多く、厳しい取引制限の対象にはなりにくいです。
ただし、「GDP速報値」と近い時期に発表される場合や、市場が「リセッション(景気後退)」に過敏になっている時期は、在庫データ一つで相場が急変することがあるため、油断は禁物です。
まとめ
卸売在庫は、米国経済の舞台裏(バックヤード)を覗くような指標です。
- 「在庫増=悪」とは限らない
- 「在庫率」を見て、売れ残りかどうかを判断する
- GDPの先行指標として活用する
「在庫の山」が宝の山なのか、それともゴミの山なのか。 これを見極められるようになれば、あなたもファンダメンタルズ分析の中級者です。