在庫売上高比率(I/S比)とは?
「卸売在庫が増加」というニュースを見たとき、それが危険なサインなのか、健全なサインなのか、どう判断していますか?
その答えを一発で教えてくれるのが、在庫売上高比率(Inventory-to-Sales Ratio)です。 通称「I/S比」とも呼ばれます。
しかし、日本の証券会社のニュースでは、この重要な比率そのものではなく、単なる「前月比(%)」しか発表されないことがほとんどです。
この記事では、ニュースで流れる「%」の数字から、プロが注目する「景気後退(リセッション)のシグナル」を読み解く方法を解説します。
在庫売上高比率(I/S比)とは
在庫売上高比率とは、現在の売上のペースで、抱えている在庫をすべて売り切るのに「何ヶ月かかるか」を示す数値です。
計算式は非常にシンプルです。 「在庫残高 ÷ 売上高 = 在庫売上高比率」
例えば、在庫が100億円分あり、1ヶ月の売上が50億円なら、 100 ÷ 50 = 2.0 となり、「今のペースだと在庫をはくのに2ヶ月かかる(=在庫は2ヶ月分)」という意味になります。
「ニュースの数字」と「実態」の違い
ここが初心者の方が最も混乱するポイントです。 証券アプリに出る数字と、実際に重視すべき数字にはズレがあります。
証券会社のニュース(速報)
- 表示:前月比(%)
- 例:「卸売在庫 +0.5%」「売上高 -0.2%」
- 特徴:先月と比べて「変化したスピード」を表す
プロが見る実態(I/S比)
- 表示:倍率(ヶ月)
- 例:「1.35倍」→「1.40倍」
- 特徴:現在の「在庫の危険レベル」を表す
※ニュースの「%」は、あくまで「倍率」を上下させる要因に過ぎません。
【最重要】数値の見方と「1.40」の壁
この指標は、「低いほど回転が良い(好況)」、「高いほど回転が悪い(不況)」と判断します。
- 数値が低下(1.25倍以下など): モノが飛ぶように売れていて、在庫補充が追いつかない状態。 → 強い好景気・インフレ圧力
- 数値が上昇(1.40倍以上など): 売上が落ち込み、倉庫に在庫が積み上がっている状態。 → リセッション(不況)入りの危険信号
過去の歴史を見ると、米国のこの比率が「1.40(約1.4ヶ月分)」を超えて上昇トレンドに入ると、その後にリセッション(景気後退)が訪れる確率が非常に高いと言われています。
アプリの「前月比」からトレンドを推測する方法
国内証券会社のアプリでは「1.40」などの倍率は表示されないことが多いため、発表された「前月比(%)」のバランスを見て、脳内で変換する必要があります。
パターン1:在庫が増えてもOKな場合(好況)
- 卸売在庫: +0.5%
- 卸売売上高: +1.0%
解説:在庫は増えていますが、それ以上に「売上」が伸びています。 結果:I/S比(倍率)は低下(改善)します。これは「売れるから在庫を積んでいる」という良い在庫増です。
パターン2:警戒すべき場合(不況の入り口)
- 卸売在庫: +0.5%
- 卸売売上高: -0.5%
解説:在庫が増えたのに、売上は減っています。 結果:I/S比(倍率)は上昇(悪化)します。これが続くと「1.40」の危険ラインに近づいていきます。
トレードでの活かし方
1. 株価指数(ダウ・ナスダック)への影響
I/S比の上昇は、企業の利益圧迫(在庫処分セールによる利益減)を意味するため、株価にとっては明確なマイナス材料となります。 「在庫 +0.5% / 売上 -1.0%」のような結果が出た場合、株価の上値が重くなる可能性があります。
2. 中長期的なドルの方向感
この指標は単月のブレが少ないため、半年〜1年単位のドルの強弱を測るのに適しています。 I/S比が高止まりしている間は、米国経済の減速が意識されるため、積極的なドル買いは手控えられやすくなります。

正確な倍率(1.37倍など)を知りたい場合は、米セントルイス連銀の『FRED』というサイトで『Wholesale Inventory to Sales Ratio』と検索するとチャートが見れますよ。本気で分析するなら必須サイトです!
Fintokeiなどのプロップファームでの扱い
この指標単体で、チャートが瞬時に100pips動くようなことは稀です。 そのため、Fintokeiなどの「ニュース取引制限(Red Folder)」の対象になることはまずありません。
しかし、「ファンダメンタルズ分析」の根拠としては最強クラスです。 「I/S比が危険水域だから、長期間のドル円ロングは避けておこう」といった、大局的な戦略(バイアス)を決めるために活用するのがプロの使い方です。
まとめ
在庫売上高比率(I/S比)は、経済の「血流」がサラサラかドロドロかを測る検査値です。
- ニュースの「%」だけでなく、「在庫と売上のバランス」を見る
- 在庫の伸び > 売上の伸び なら、危険信号(倍率悪化)
- 「1.40倍」を超えてくるとリセッション警戒レベル
「卸売在庫」のニュースを見るときは、ぜひ「売上高」の結果もセットで確認し、「どっちの伸びが大きいかな?」と比較する癖をつけてみてください。