貿易収支とは?
「米国は世界一の経済大国ですが、借金も世界一です」 ニュースでこんなフレーズを聞いたことはありませんか?
その借金体質を象徴するのが、今回解説する「貿易収支」です。
米国は長年、海外からモノを買いまくる「貿易赤字国」です。 一見すると「赤字=悪いこと」に見えますが、こと米国経済においては、そう単純な話ではありません。
この記事では、米国貿易収支の仕組みと、GDPや為替レートに与える影響について解説します。
貿易収支とは
貿易収支(Trade Balance)は、米国商務省が毎月(翌々月の初旬)に発表する、一定期間の「輸出額」と「輸入額」の差額を示す指標です。
計算式は至ってシンプルです。 「輸出額 - 輸入額 = 貿易収支」
「黒字」と「赤字」の意味
まずは基本的な言葉の定義を整理しておきましょう。
貿易黒字(Surplus)
- 状態:輸出 > 輸入
- お金の流れ:外貨を稼いでいる
- 通貨への影響:買い要因(例:かつての日本、ドイツ)
貿易赤字(Deficit)
- 状態:輸出 < 輸入
- お金の流れ:自国通貨を支払っている
- 通貨への影響:売り要因(例:米国)
なぜ米国は「慢性的な赤字」なのか?
米国の貿易収支は、何十年もの間、ずっと赤字(マイナス)です。 これには明確な理由があります。
1. 旺盛な消費意欲(モノの赤字)
米国経済の約7割は「個人消費」です。米国民は稼いだお金で、世界中から自動車、家電、衣類などを大量に輸入して消費します。 そのため、「モノ(財)の収支」は巨額の赤字になります。
2. サービスで稼ぐ国(サービスの黒字)
一方で、金融、IT、特許、コンサルティングなどの「サービス収支」は黒字です。 GAFAM(Google, Apple, etc.)に代表されるように、米国はモノではなく「知恵やサービス」を売って稼ぐ構造になっています。

『モノの赤字』が大きすぎて全体ではマイナスになっていますが、これは『米国経済が強くて、国民が豊かな証拠』でもあります。だから、赤字だからといって直ちに米国崩壊!とはならないんです。
トレードで注目すべき「GDP」との関係
FXトレーダーが貿易収支を見る最大の理由は、これがGDP(国内総生産)の計算に使われるからです。
【GDPの計算式】 GDP = 消費 + 投資 + 政府支出 + (輸出 - 輸入)
この式を見るとわかる通り、
- 輸入が増える(赤字拡大) → GDPのマイナス要因(成長率を引き下げる)
- 輸入が減る(赤字縮小) → GDPのプラス要因(成長率を押し上げる)
つまり、貿易赤字が予想以上に膨らむと、「来月発表されるGDPが悪くなるかもしれない」という連想が働き、ドル売りにつながることがあります。
トレードでの活かし方と注意点
1. 為替への直接的な影響は限定的
教科書的には「貿易赤字=ドル売り」ですが、現在の市場では、貿易収支の結果だけでトレンドが発生することは稀です。 ただし、予想と大きく乖離(サプライズ)した場合は、瞬間的に20〜30pips動くことがあります。
2. 政治的な材料になる(トランプ相場など)
経済的な意味よりも、政治的な意味で注目されることがあります。 時の大統領が「貿易赤字を減らす!」と宣言している場合(トランプ政権など)、赤字拡大のニュースが出ると、「関税強化」や「貿易戦争」の懸念が高まり、リスクオフ(円高)になるパターンです。
まとめ
米国の貿易収支は、世界経済の縮図です。
- 米国は「輸入大国」であり、慢性的な貿易赤字である
- 「赤字拡大」はGDPのマイナス要因になる
- 為替そのものより、「政治・通商政策」のトリガーとして警戒する
普段はスルーされがちな指標ですが、GDPの発表前や、大統領選・中間選挙の時期には存在感を増します。 「赤字=米国の消費パワー」という背景を理解した上で、数字をチェックしてみましょう。